札樽病院ブログ神経内科ミニ知識2019年10月23日

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2019.10.23 UP
第16回 歩行の異常

※HPリニューアルにつき、過去に投稿した記事を再投稿しております。

歩行は、人間が進化の過程で獲得してきた重要な機能の一つで、私たちの行動を格段に拡大しています。
歩行ができないと行動範囲が極端に狭くなり、また歩行が可能でも異常な歩き方では生活が不自由となるだけでなく、関節・骨・筋肉過剰な負担をかけて年月の後には運動器の障害を招きます。
従って、歩行は人間の生活の質(QOL; Quality Of Life)を決める重要な要因の一つと言えます。
今回は、歩行の異常とその特徴についてご説明します。
歩行の異常の中には特徴的で、有名な名前のついているものもあれば、特徴の捉えがたい不安定なものもあります。

 代表的なものとしては以下があります。

1)   引きずり歩行:下肢に麻痺がある際や、痛み変形があるときに起こり、その側の足を引きずって歩きます。

2)   痙性歩行:脊髄の障害で麻痺が出る場合にはその側の足を突っ張らせながら引きずり歩行となります。
両足に起これば両足(ハサミ)のように組み合わせて歩くので「(ハサミ)歩行」とも言います。

3)   失調歩行:小脳前庭脊髄末梢神経などの神経系に異常があるときに出現し、下肢の筋力低下がなくても起こります。
ふらふらと不安定にバランス悪く歩きます。

4)   鶏歩(けいほ):足首を上に屈曲する働きの低下のためつま先が上がりにくくなり、歩く際に毎回振り上げた足が地面から上に上がらず、上がってもつま先がすぐ床に落ちてしまう歩き方。
ニワトリの歩き方に似るためこの名前がつきました。

5)   よちよち歩行:腰の周りを安定させる筋肉が弱いために一歩ごとに骨盤が交互に左右に傾き腰と上半身を振って歩く

6)   パーキンソン歩行:前かがみの姿勢で膝を曲げ、足を床から上げず、小刻み歩く。手の振りも少ない。

7)   奇怪歩行:全身や下肢に不随意運動があるとき、不随意運動のために歩くとき一見奇怪に見えます。

8)   ヒステリー性歩行:心因性で起こる歩行異常。
様々な形をとり、全く歩けないこともあります。

9)   間欠跛行(かんけつはこう):最初は歩けるが、症例ごとに違う一定の時間や、一定の距離を歩くと、下肢の疼痛や脱力のために歩けなくなる。
脊髄性のものと、下肢の血管の狭窄で起こるものの2種類があるが、どちらも治療の方法があることも多い。

 

次回、第17回は「ボトックス治療」です。