2022年12月23日、高草木薫教授(旭川医科大学医学部 生理学講座神経機能分野)に、「ロボットリハビリテーションと神経生理学的メカニズム」についてご講演して頂きました。高草木先生は、数年前より当院で「姿勢制御」や「神経生理学的メカニズム」について、ご講演して頂いています。
今回は、主に「Hybrid Assistive Limb®:サイバーダイン社(以下、HAL®)」を利用したパーキンソン病患者へのリハビリテーションに関してご講演して頂きました。講演の内容と感想を簡単にまとめましたのでご覧ください。
感覚情報と姿勢制御
今回の内容の1つは、姿勢制御の基礎知識についてです。リハビリテーションを行う上で「姿勢・運動制御」は大変重要な要素の一つです。今までの高草木先生の当院講演会でも、同様の内容をご講義して頂いておりましたが、いつもながら「わかりやく」、「ゆっくりと」お話し頂きました。改めて、様々な感覚情報が「姿勢・運動制御」に多く影響を与え、結果、「運動学習」に大きく関わっている事に気が付くことができました。特に「からだを動かす」ことを伝えるリハビリ専門職にとっては、感覚情報入力がもたらす、「小脳」や「大脳基底核」による運動学習の理論は、とても大切な知識だと思います。今回の講義を基礎に、各スタッフが今までのリハビリテーション内容を振り返る良い機会になると思います。
ロボットリハビリテーションと姿勢制御
もう一つの内容は、本題の「ロボットリハビリテーション」についてでした。今回の内容は、当院にも導入しているHAL®とパーキンソン病についてご講義頂きました。パーキンソン病患者へのHAL®は大変有効との事でした。
有効である理由は、パーキンソン病患者の姿勢制御の特徴である、ドーパミンが作用する「大脳基底核」などの機能低下が考えられる一方で、「小脳」を用いた神経回路は温存されているという特徴があるためとの事です。パーキンソン病の患者様の特徴として、運動を始める事が難しい事や、筋肉が硬くなり手足の運動が行いにくいなどの特徴があります。しかし、身体の様々な場所から感覚情報が多く集まる「小脳」の機能が温存されているため、HAL®を用いる事で、わずかな筋の反応などに反応して、ロボットのモーターが足を動かすことが出来ます。その際に筋肉や関節などから生じる感覚情報が、うまく「小脳」に取り入れられ、感覚誘導性の運動学習が行われる可能性があるとのことでした。
私たちもパーキンソン病の患者様にHAL®を用いたリハビリテーションを行う経験があり、治療効果に「手ごたえ」を感じていました。今回の講義を聞き、自分たちの「手ごたえ」が神経生理学的メカニズムの理論を当てはめられる事ができ、大変有意義な機会となりました。また、ロボット機器を用いながらも感覚情報に基づいた姿勢制御について、もっと意識する必要性があると感じました。
まとめと感想
当院では、効率的なリハビリテーションが行えるように、HAL®以外にも、様々なロボットリハビリテーション機器を導入しています。当院が「ロボットリハビリテーション」を導入して以来、従来の治療にプラスされた治療効果に「手ごたえ」を感じていました。その「手ごたえ」は、神経生理学的な理論に当てはめられる可能性がある事がわかりました。「神経生理学」の分野は、当院としてはまだまだ知識不足でもあり、そしてこれからも新しい知見がどんどん発見される分野だと思います。さらに知識を深め、「神経生理学的メカニズム」をリハビリテーションにどんどん取り入れ、よりよいリハビリテーションを患者様に提供できるように努めていきたいと思いました。(理学療法士 植村和広)
こんにちは。管理栄養士の冨中です。
みなさんクリスマスはどんなご馳走を召し上がりましたか?冬の北海道は、寒くて雪かきばかりに追われ大変なイメージですが、そんな中でも12月の町並みはクリスマス一色の雰囲気でワクワクします。
個人的には、子供のプレゼントを選びやクリスマス当日の喜ぶ顔を想像したり、クリスマスの音楽を聴いたり、サンタさんの話をして過ごすなど冬では一番好きな時期です。
小話ですが・・・クリスマスの前日に、ツリーの近くにクッキーや牛乳を置く習慣をご存知ですか?翌朝プレゼントが届き、置いたものが食べられているとサンタさんが来たという証拠となるそうです。海外の習慣で、サンタさんへの感謝の気持ちをこめて始まったと言われています、素敵ですね!
当院でも、患者様が楽しめるクリスマスメニューを提供したのでご紹介します。
札樽病院のクリスマスメニュー
- カツサンド
- マリトッツォ
- 具沢山のミネストローネ
- ケーキ
パンメニューは大人気メニューの一つです。カツサンドには、かわいいピックを使用したことで、よりクリスマス感がでました。カツは、柔らかいお肉を使用し、高齢の方でもかみ切れるよう工夫しています。柔らかい食事(軟菜食)の方にはカツの代わりに厚焼き玉子をサンドしました。マリトッツォはイタリア発祥のクリームを大量に挟んだパンのことで、甘酸っぱいいちごと組み合わせてみました。ミネストローネは野菜たっぷりで身体が温まるメニュー、彩りもクリスマスカラーです。食後のデザートのケーキは、いちご味とチョコ味2つ楽しめるよう盛り合わせにしてみました。
「病院でケーキが出るなんて嬉しかった」「カツが柔らかくてペロッと食べれたよ」「途中でお腹いっぱいになったけど結局全部食べちゃった」などうれしい声をたくさん聞くことが出来ました。
今年も1週間を切りました。365日休まず食事を提供する厨房には、これから年末年始の大仕事が待っています。入院患者さんが来年もよい年を迎えられるよう素敵なメニューを提供予定です。またご紹介しますので、楽しみにお待ちください。みなさんも楽しい年末年始をお過ごしください。(お餅の食べすぎにはご注意を・・・)
2022年12月17日、福岡で開催された「第6回 日本安全運転医療学会学術集会」に当院の作業療法士が参加し、演題発表をしてまいりました。
「脳卒中後遺症患者の運転再開評価における神経心理学的検査とDS(ドライブシミュレータ)の有効性について」というテーマで作業療法士の佐々木が発表いたしました。
札樽病院では、自動車運転評価を2018年から実施していますが、現在までの脳卒中後遺症者の運転評価結果を分析し、どのような傾向があるのかを検討しました。机上検査で合格値であっても、ドライブシミュレーターを利用時に高次脳機能障害の影響が発生する事例が多く、ドライブシミュレーターの有用性が認められる結果になりました。
今後も、脳卒中後遺症患者様の自動車運転再開に向けて評価・治療に邁進してまいります。
運転評価について、ご希望の方は、札樽病院・地域連携部までお問合せください。
こんにちは。札樽病院薬剤部です。皆さんもワクチンについて多く考える1年だったのではないでしょうか?
免疫とは?
赤ちゃんがおたふくかぜにかかってなおると、「この子はもう生涯、おたふくかぜにはかからない」といいます。このように「一度おたふくかぜにかかったので、もう二度とかからない」ことを、「おたふくかぜに免疫を持っている」といいます。
「免疫」とは「疫(えやみ=やまい)」から「免れる」ということです。免疫ができる病気はいくつか知られていますので、適応力の大きい乳幼児の時に、あるいは健康な時に、あらかじめ免疫を作り上げる工夫がされています。「免疫をつくる種(たね)」をワクチンといいますが、これを注射したり皮膚に付けたりして、その病気に対する免疫力を造るのです。
ワクチンとは?
ワクチンとは「牛の疱瘡から造った免疫の種」というドイツ語「バクチーン」を借りた言葉で「種痘」と翻訳されますが、疱瘡以外の病気についても「免疫の種、免疫を造る薬」という意味で使われます。免疫ができる病気はいくつか知られていますので、適応力の大きい乳幼児の時に、あるいは健康な時に、あらかじめ免疫を作り上げる工夫がされています。「免疫をつくる種(たね)」を注射したり皮膚に付けたりして、その病気に対する免疫力を造るのです。
また、ワクチンを接種することを予防接種といいます。最近では2020年から新たに発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、ワクチンによる感染や疾病の予防について期待が高まり、その重要性が認識されています。
ワクチンの歴史
ワクチンというのは1796年にイギリス人医師ジェンナーが天然痘ワクチンを8歳の少年に対して接種したのが始まりといわれていて、それから220年あまりが経過しています。その間、多くの先人たちによりワクチンの製造技術、品質管理の技術の進歩がなされてきました。ワクチン類は、これまでの感染症の予防と治療の分野で大きな役割を果たしてきました。細菌学・ウイルス学・免疫学などをはじめとする学問の進歩が見覚ましいものがある一方、世界的には2009年のパンデミックインフルエンザ、中東呼吸器感染症(MERS)、アフリカにおけるエボラ出血熱、COVID-19が世界に多大な影響を与えており、今後も新興感染症の発生に注視が必要です。
とはいえ、1980年5月、WHOが天然痘根絶を宣言したように人類は脅威であった感染症を一つ地球上から無くすことができました。
予防接種の意義
COVID-19についても、発生当初は、三密の回避、マスク、手指衛生など薬物以外のものに頼らざるを得なかった予防方法も、異例の早さで開発・実用化が進められたワクチンの登場によって、薬物による予防ができるようになり、対応も大きく変わりました。一方、COVID-19の勢いに押されたのか、あるいは薬物以外の手法が功を奏したのか、季節性インフルエンザや小児を中心とした多くの一般的な感染症は軒並み減少しました。しかしこれも感染症パターンが変化し、海外では激しいロックダウン等から小児の定期予防接種を受ける機会が減り、予防接種によって防げる疾患の発生等が危惧されています。国内でも同様の傾向が一部みられていますが、全般的には定期接種は粛々と進められています。
ちょっと違う地域の話になりますが、世界では約880万人の5歳未満のこども達が亡くなっていて(2008年)そのほとんどが開発途上国や戦争下の子どもたちです。死亡の原因のほとんどが感染症によるものであり、その17%のこども達は予防接種(ワクチン)で予防できるものです。感染症はCOVID-19のみではありません。
ワクチンがあるものはワクチンできちんと防ぐ、今こそより大切です。