2021.01.19 UP
健康コラム「TIAと脳梗塞 part3」【銭函リハビリテーション学校】
今回は、脳神経外科医・村井宏Drによる、健康コラム「TIAと脳梗塞シリーズ」part3をお届けします。
血管閉塞や狭窄で脳血流が不足して脳が死んでしまうと脳梗塞となり症状は固定します。しかし血流が不足して脳が死にかけたものの、血流が再開して症状が消失してしまう事態もありこの状態をTIAといいます。TIAとは一過性脳虚血発作(Transient Ischemic Attack)の頭文字をとったものです。実例を見てみましょう。
【Cさん、60歳、男性】
高脂血症があるが放置。時に動悸やエレベータに乗った時のようなフワーッとする感じを自覚。タバコ20本、焼酎を毎日コップ2杯。体重が最近5Kg増えた。パチンコをしている時に急に左手足から力が抜けたが5分ほどで消失。8日後に職場で急に倒れた。両方の眼球は右を睨んでおり、呼んでも反応せず、左手足は全く動かなかった。病院で不整脈(心房細動)の存在と右の脳血管の閉塞が分かった。心臓に出来た血塊が脳に飛んだことによる脳梗塞と診断された(脳塞栓)。発症から短時間であったため、管(カテーテル)を用いて閉塞部の血栓が除去された。直後から意識が戻り、左手足も徐々に動くようになった。
心臓は電気が規則正しく発生し全体に伝わって収縮して血液を送っていますが、心房細動ではバラバラに電気刺激が出て部屋が有効に収縮せず、滞った血液が固まることがあります。これが送り出されると血管を閉塞するのです。
小さな血栓が飛んだがすぐに溶けた後(TIA)、本格的に飛んだのが今回の経過です。心臓からの脳梗塞は心原性脳塞栓と呼ばれ脳梗塞の約25~30%を占めます。大きな血管が詰まることが多く重症例が多いのが特徴です。平均寿命の伸びにより心房細動の患者数は近年増えています。