2020.12.11 UP
健康コラム「TIAと脳梗塞 part2」【銭函リハビリテーション学校】
札樽病院の脳神経外科・村井宏Drによる健康コラム「TIAと脳梗塞」を4回のシリーズでお届けします!
<第2回目>
血管閉塞や狭窄で脳血流が不足して脳が死んでしまうと脳梗塞となり症状は固定します。しかし血流が不足して脳が死にかけたものの、血流が再開して症状が消失してしまう事態もありこの状態をTIAといいます。TIAとは一過性脳虚血発作(Transient Ischemic Attack)の頭文字をとったものです。実例を見てみましょう。
【Bさん、70歳、女性】 糖尿病治療中。朝食の時に漬物をうまく掴めず呂律が回っていないと夫は感じていた。
しかし本人は「大丈夫」と言っておりすぐに元に戻った。夫はテレビで見た脳の病気の放送を思い出し、症状も似ていたので午前中に病院へ連れて行った。
左の内頚動脈に強い狭窄がありそのまま入院。点滴と飲み薬が始まり、数日後に狭い所を風船で拡げてステントが留置され自宅退院した。右手の使いにくさと呂律が回らなかったのは左脳のTIAの症状と考えられた。幸いにもBさんは無症状で脳梗塞を免れた。
ステントは細い管(カテーテル)から送り出された後、自分で広がる力を持った形状記憶合金でできており留置しても日常生活に支障は出ません。
このように血流が不足して、運動マヒや感覚障害、口のもつれなどの神経症状が現れるものの、脳細胞が死滅する前に血流が再開して短時間で症状が消失する状態がTIAです。しかし原因が解決されなければまた同じ状態が起こる可能性があり、今度起こった時には脳が傷んで脳梗塞になってしまうかもしれません。脳梗塞の全てにTIAの状態が存在するわけではありませんが、一時的にでも以下の症状が出た時には「放置しないで、病院に早くかかりなさい」というサインだと考えて下さい。
<TIAの症状>
- 手足に力が入らない
- しびれる
- 口のもつれや言葉が出ない
- 複視や視野狭窄
- 片目が見えない
- めまい
- 記憶障害
- 意識障害